「絶望死」
最近海外のニュース記事を見てたまに目にする言葉。
正直あまりピンとこない言葉。
経済状況の悪化、セーフティネットの喪失により未来に希望が持てなくなり
アルコールや薬物依存に伴う病気、または自殺で亡くなってしまう事を言うらしい。
これは、アメリカの労働者(主に白人の非大卒)について書かれた本だ。
この本によると、世界の寿命は延び続けているのに何故かアメリカ人の平均寿命は
縮んでいるという。
貧しい人は短命、裕福な人は長生き。
裕福な人は良い環境、良い教育、良い医療…
貧しい人はその逆。
アメリカという国全体で見れば景気が良くても、蓋を開ければ貧富の差が激しく、とても裕福な人がいる一方、先進国とは言えないくらい貧しい人もいるという事だ。
この本を読んでいると国によって事情が違うとはいえ日本でも起こっているよなと感じる。
日本では貧困の連鎖とよく言われているだろうか。
貧しい人は怠惰で努力不足だから貧困でも自己責任なのだから仕方がないのだろうか。
この本に出てくる人は確かに自ら誤った選択をし貧困に陥っている一面も書かれている。
しかし、人の役にたちたいといった一面も書かれている。
決して働きたくないという訳では無いのだ。
むしろ働きたいが、満足な収入を得れる仕事が無く、生活に行き詰まり八方塞になる事情がある。
仕事をしても満足な収入を得られない、しかし迫りくる請求書…
現実逃避の為に手を出すアルコールに薬。
そしてどんどん不健康になる肉体。
ますます難しくなる就労。負の連鎖だ。
当然ながら次の世代にもこれは連鎖する。
そもそも何故貧困になってしまったのか。
日本でも言われているが、所謂ブルーカラーで収入の良い仕事が減ったという事が貧困の一つの原因として書かれている。
結局産業構造が変わったけれど、労働者としてはそうそう簡単に新しい知識や技術を身に着けられないし、どうしてもあぶれてしまう人は出てしまう。
このあぶれてしまった人を自己責任で放置してしまった結果が現在だ。
では、お金さえ渡せば絶望しないのか。
私は違うと思う。
人間という生き物は人の役に立ちたい、感謝されたいという欲求があると私は思う。
仕事は生きていく為の収入を得る手段だ。
しかし、承認欲求を満たす手段でもあると毎日仕事をして感じる。
問題解決には教育システム、依存症の問題、労働者のスキルアップ等の問題があり
すぐには解決しないだろう。
しかし、この様な現実もあるのだと知る必要があると感じた一冊だった。